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古代ギリシャ神話での時代区分についてのメモ
古代ギリシャ神話(主にアストライアと大洪水の時期について)を調べていたところ、ものによって結構記述内容が違うらしい。 そもそも古代ギリシャ神話についての原典のような文献としては主に下記があげられるようだ。
古代ギリシャ神話の出典として扱われる文献たち
| 著者 | 時代 | 主要著作 | 関連する記述 |
|---|---|---|---|
| ヘシオドス (Hesiodos) | 紀元前 8 世紀 (古代ギリシャ) | 『仕事と日々』 (Works and Days) 『神統記』 (Theogony) | 五時代説(黄金 → 銀 → 青銅 →英雄→ 鉄) アストライアへの直接言及なし デウカリオンの洪水に言及 |
| アラトス (Aratos) | 紀元前 315-240 年頃 (ヘレニズム期) | 『ファイノメナ』 (Phaenomena) | アストライアが段階的に人間から離れ、最終的に天に昇り乙女座になる 明確な時代区分との対応なし |
| オウィディウス (Ovidius) | 紀元前 43-紀元後 17/18 年 (ローマ帝国初期) | 『変身物語』 (Metamorphoses) | 四時代説(黄金 → 銀 → 青銅 → 鉄) 鉄の時代にアストライアが去る その後デウカリオンの大洪水 |
補足
- 時代順: ヘシオドス → アラトス(約 500 年後) → オウィディウス(約 700 年後)
- アストライアの記述: アラトスが最も詳細、オウィディウスが時代論と明確に結びつけた
- 影響関係: 後代の著者たちは先行作品を参照・改変している
時代の取り扱いの違い
上記ではアラトスも入っているが、時代の変遷に関する明確な記述があるのはヘシオドスとオウィディウスの 2 人なのでそれらについての分析。 人類が最も荒廃した時代が青銅の時代なのか鉄の時代なのかという点が違う。これらの時代にゼウスが人類を見限り大洪水で流すことにした。
ヘシオドスの五時代説
- 黄金時代
- 銀時代
- 青銅時代
- 英雄時代(← これが重要)
- 鉄時代
オウィディウスの四時代説
- 黄金時代
- 銀時代
- 青銅時代
- 鉄時代(アストライアが去る)
- (その後)大洪水
根本的な違い
-
オウィディウスには「英雄時代」が存在しない
- ローマの詩人であるオウィディウスは、ギリシャ伝統の五時代説ではなく、四時代説を採用
-
大洪水の位置づけが異なる
- ヘシオドス伝承:青銅時代の終わり → 英雄時代の始まり
- オウィディウス:鉄時代の後(全時代の後)
-
トロイア戦争などの英雄たちの位置づけ
- ヘシオドスでは青銅時代と鉄時代の間に英雄時代がある
- オウィディウスの体系にはこの時代が組み込まれていない
ヘシオドス伝承に記述されている英雄時代は話の流れとして少しおかしく感じる。人類が徐々に堕落して大洪水が起こされるまでの間に、唐突に英雄の活躍が挟み込まれている。わざわざこれを吹聴する裏の理由があったような気もしてくる。例えば英雄譚によって政権の正統性を主張していたとか?よく知らないで適当にものを言っています、すみません。
ヘシオドスの『仕事と日々』の五時代説
一応の補足として。
-
黄金時代(Golden Age)
- クロノスの統治下
- 人類は神々のように平和に暮らし、労働なしで大地が実りをもたらした
- 死は眠りのようで、苦しみがなかった
- アストライアは人間と共に地上にいた
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銀時代(Silver Age)
- ゼウスの統治が始まる
- 人々は不死を失い、幼年期が長く、短い成人期を持った
- 傲慢で神々を敬わなくなった
- アストライアはまだ地上にいたが、人間の堕落を嘆き始める
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青銅時代(Bronze Age)
- 暴力的で好戦的な人類の時代
- 武器も道具も青銅製
- 互いに殺し合い、戦争に明け暮れた
- アストライアは人類の暴力と不正義に絶望し、この時代の終わり頃に地上を去って天に昇り、乙女座となった
- この時代の終わりにデウカリオンの大洪水が発生
- ゼウスが堕落した人類を滅ぼすために起こした
- デウカリオンとピュラのみが生き残った
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英雄時代(Heroic Age)
- 洪水後の新しい人類の時代
- トロイア戦争、テーバイ攻めなどの英雄たちの時代
- 半神半人の英雄たちが活躍
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鉄時代(Iron Age)
- ヘシオドスの現代(紀元前 8 世紀頃)以降
- 最も堕落した時代
- 労働と苦悩に満ちている
- 正義と敬虔さが失われた
補足
アストライアが出る部分の神話参考図書:
- Ovid, Metamorphoses 1.148-150
- Aratus, Phaenomena 96-136
↑ の英語訳版: